音も弾き心地も犠牲にしない。ヘッドウェイが考える究極のトラベルサイズアコースティックギター。
一般的にトラベルギター、ミニギターと呼ばれる小振りなサイズのギターはリーズナブルで試し易く、最近は各メーカーから発売されていることもあって選択肢が増えつつあります。
ギターに限らず楽器全般に言えることですが、サイズが大きくなると低音を担ったり、小さくなるほど高い音域を担います。「その楽器が出せる音」と「楽器の大きさ」に相関関係があることは、ふだん意識せずとも誰もが知っています。
ギターもその音域を出すために最も良いサイズ(シェイプ)を追求してあの形状になっています。しかし、一方でギターの音色を維持しながら形を変えていきたい、という考えも生まれます。それこそがミニギター製作のきっかけ。結果として手工を凝らしたミニギターが各社から発売されています。
さてここまでのところ発売されているミニギター、トラベルギターはその性質上コスト面と小型化に重きを置いて製作されているように見受けられます。
ミニギター開発においてギター製作者・メーカーの個性が出るのは、「サイズ感(演奏性)とサウンドのバランスをどう取るか」という点に集約されるように感じます。
この度ヘッドウェイ飛鳥チームビルドシリーズで「究極のトラベルサイズアコギ」を形にするべく開発に着手、製作が進んでいます。
↑現在制作中のATBシリーズHT-615 N,S/ATBが手前、HDが後ろ
型式は「HT」、このモデルの開発にあたってヘッドウェイマスタービルダー「降幡新」が中心に製作を進めています。2019年6月頃にカスタムショップシリーズにて製作した#F00017のミニサイズカスタムモデルの設計が元になっています。
降幡
「トラベルギターというジャンルであっても音には徹底的にこだわりたい、そう思って#F00017を製作しました。610mmスケールに設定したのもその一つ、スケールを短くするとどうしても鳴りの面で弱くなってしまいます。その意味で610mmを下回るのは得策ではないと考えました。」
カスタムショップ製のミニギター製作と前後して、同じシェイプの12Fジョイントもプロトモデルを製作。ギターの全長としては14Fジョイントに比べ短くなりますが、外観面のバランスがあまり良くなく、このプロトモデルの結果を踏まえ飛鳥チームビルドシリーズでは14Fジョイントを採用することになりました。
ギターのサイズが小さくなると音量だけではなく「鳴り」、特に低音が弱まったり倍音成分が少なくなったり、ともすると味気ない音になってしまいます。
ボディサイズとスケールをサイズダウンする代わりに、降幡が新たにデザインしたHT用のノーマルX・スキャロップブレイシングは強度を犠牲にすることなく、このギターのトップ板が最も効率よく振動するレイアウトになっています。
音にこだわってきたヘッドウェイギターの面目躍如と言える様なトラベルギターを目指し、降幡製作によるヘッドウェイカスタムショップ・ミニギターはフルサイズギターに引けを取らないサウンドを実現しました。
飛鳥チームビルドシリーズでは、この降幡カスタムモデルをそのまま落とし込みました。製作にあたっては、通常のフルサイズギターの治具がそのまま使えない箇所も多々あり、一度に多くの数を製作することはまだ出来ません。
第一弾としてシトカスプルーストップ・インディアンローズウッドサイドバックのHT-615 N,S/ATB、シトカスプルーストップ・ホンジュラスマホガニーサイドバックのHT-613 N,S/ATB、同じくシトカスプルーストップで桜をサイドバックに用いたHT-SAKURA N,S/ATBを製作中。
↑抱えたときのサイズ感。サイズダウンしたことによる弾きやすさ、抱えやすさのメリットを十分に享受しつつ、抜群にいい音で鳴る、という絶妙なシェイプです。
ヘッドウェイが真正面からトラベルギターの可能性に迫った意欲作「HT」。完成をお楽しみにお待ち下さい!!