ヘッドウェイブランドとは
1977年に創業し、今では国内老舗ブランドとも言える存在になったヘッドウェイアコースティックギター。2000年台前半には国産だけでなく海外工場製シリーズ(Universe series)もスタートし、アコースティックギターの熟達者、マニアのためだけでなく広く初心者、入門者にも親しみやすいブランドへ変化し続けています。
そして2018年に新たにスタートした製品ラインナップが「Headway Japan Tune-up series(ヘッドウェイ・ジャパンチューンナップシリーズ)」です。
海外工場で制作されたギターが日本に入荷した後、日本の職人が文字通り「チューンナップ」することではじめて「ギターが完成」する、今までにないシステムでユーザーの方へお届けする製品ラインナップです。
弾きやすさはセッティング次第
実はギターの弾きやすさ、演奏性に関わる箇所は意外なほど工程の後半に集中します。プロのギタリストはいわゆる「吊るしのギター」を買うと、そのままで使うことはなく、一度信頼のおけるリペアマンに預け、自分の弾きやすいセッティングに詰めてから仕事に使い始めると言います。これはJapan Tune-up seriesのコンセプトを端的に表しています。つまり「セッティングをどこまで詰めるかで、ギター自体の品質が大きく変わる」ということです。
このギター作りの最後の工程を日本の職人が担うことでJapan Tune-up seriesは同価格帯のギターと比較しても群を抜いた完成度を実現しました。
「最後のひと手間を惜しまず、より良いギターに仕上げたい」という気持ちはヘッドウェイが創業時から大切に引き継いできた、まさにヘッドウェイの根幹を支える価値観。
このページではHEADWAY Japan Tune-up seriesの「Japan Tune-up」たるポイントを一つ一つご紹介してまいります!
アリ溝加工+後仕込みネック
上位シリーズにあるヘッドウェイスタンダードシリーズ、飛鳥チームビルドシリーズでも採用している、ネックのアリ溝加工(ダブテイルジョイント)をJTシリーズ製品でも実現しています。アコースティックギターのネックジョイントはボルト止めや、ジョイント部分の形状がもっとシンプルなものなどいくつかの方法がありますが、ヘッドウェイでは昔ながらで、かつ手間のかかるアリ溝ジョイントを採用しています。また、ネックとボディを塗装後に接着する「ネックの後仕込み」で製作しています。
塗装工程中は塗装、乾燥時に湿度・温度が変化します。もちろんこれはギターの木部に影響を与え、予期せぬ板の変形を招くこともあります。塗装前にネックとボディをジョイントしていた場合、ボディやネックに動きが見られた場合のリカバリの範囲が非常に狭くなるのに対し、塗装後にネックとボディをジョイントする「後仕込み」の場合はネックの差し込み角の調整などリカバリ方法にも幅が出ます。手間がかかるものの、楽器自体の完成度を高める意味では意味のある工程です。
JTシリーズ製品でも全てこのアリ溝加工+後仕込みネックを採用しており、質の高いものづくりを実現しています。
コンセプトを具現化する工房
HEADWAY Japan Tune-up seriesを担う「工房」
「Workshop Deviser Guitars」
ワークショップ・ディバイザーギターズ
長野県松本市のディバイザー本社屋近くにあるワークショップ・ディバイザーギターズにてJTシリーズは仕上げられています。
建物2Fが全て工房スペースとなっており、JTシリーズ製品のほかエレキギターブランド「Bacchus Guitars」のCraft seriesの生産も受け持っています。
現在3名の職人が上記2ブランドの製品を中心に作業を進めています。
1:入荷品の検品
海外工場から届いたギターは開梱され全体チェックを行います。
入荷した個体はヘッド、ネック、ボディ全ての箇所を目視で確認し、塗装ミスやネックねじれ、打痕など、不具合がないか細部に渡ってチェックを行います。
2:ナット
ナットは弦を支える重要な箇所。工場出荷時の弦のゲージ(.012-.053)とナット幅が合わない場合、弦の振幅がナット付近でロスしてしまい、ギター本体が効率良く振動しないばかりか、不要なビビリ音の原因になります。
溝を弦のゲージにピッタリと合わせるのと同時に、全体を磨き上げて仕上げます。スムーズなフィンガリングを助け、外観の美しさにこだわっています。
3:サドル
サドルはナットと同様に弦とボディの接点に位置するパーツ。ナット・サドルはもともとブロック状の牛骨の角材から削り、磨くことで成形します。特にサドルはどこまでもこだわる事ができる、ある意味職人泣かせな部分です。
ギターセッティングにおける「オクターブ調整」という言葉をご存知でしょうか。ギターの構造上サドルの位置(支点)は一直線で結べるものではなく、それぞれの弦で支点の位置は微妙に異なります。
エレキギターのサドルが1弦ごとに個別に前後できる機構になっているのは、このオクターブ調整を正確に行うためです。
一方アコースティックギターは一つの角材から削り出すため、購入後にユーザーが気軽に調整することができないため、ギター製作者の始めの加工がそのままそのギターの品質を左右します。
特に安価なギターはサドルにかける時間、コストを省き予め整形されたプラスチックのサドルをセットすることが多いですが、JTシリーズではサドルを一から制作し、なめらかなカーブと弦をしっかり支えるピークを持った、ハンドメイドならではのものに仕上げています。
4:フレットエッジの丸め加工
指板のはじめから終わりまで打ち込まれているフレット。アコースティックギターは金属弦を使用するため、自ずとフレットも同程度の強度を持つ金属製となります。
指板が木材であることに対して、フレットは金属であることから、必然的に気温、湿度といった環境に対する収縮率に差が生まれます。その結果木部である指板が収縮し、金属であるフレットがそのままの寸法で変化しなかった場合、フレットの「バリ」がギターの演奏性を落とします。これはギターの構造上どうしても避けられない現象です。
バリの問題を直接解決するわけではありませんが、JTシリーズではフレット端を丁寧に磨き上げることで、スムーズなフィンガリングを約束します。試奏する際はこのフレットの仕上げのクオリティにまず気づくはずです。
5:低めの弦高セッティング
エレキギターよりも弦のゲージが高く、押さえる際に力を要するのがアコースティックギター。必然的に弦高の設定でも弾き心地が大きく変わります。
近年の指弾きスタイルの台頭もあり、ギターのプレイスタイルはより表情豊かなものに変化しています。
従来のヘッドウェイはピックストローク時に弾きごたえのあるセッティングを良しとしていましたが、JTシリーズではより弾きやすさを重視し、弦高を極力低めにし、繊細なタッチでも弾きこなせるようなセッティングを施しています。
6:指板に対する処理
楽器店に無数に並ぶギターは圧巻ですが、選択肢が多すぎて一瞬混乱します。それでも人はギターをひと目見て、良いものか悪いものか、どこから感じ取っているのでしょうか。
ギターの塗装も国内、海外問わずレベルが高くなりつつあり、一見すると大きな違いは無く感じられます。実は「指板面の質感から品質の違いを感じ取っている」、という見方があります。
指板面には意外なほどに情報が詰まっています。
まず素材。指板に使用されている木材の目が詰まっているか、木の黒さはどうか、濃い方が硬質なものと考えられます。
次に前述の「フレットの仕上げ」。きっちり丸めてある方が見た目にも美しいです。
最後に「指板の色ツヤ」。いくら個体としていい素材が使われていたとしても、しっかりと磨かれて拭き上げられていない楽器は、その他の部分でも何か製作上の見落としがあるかもしれません。
JTシリーズのギターは指板面にオイルをしっかりと塗り、ユーザーの手に届くまで最良の状態をキープできる様に仕上げられます。
このギターを完全に仕上げた総仕上げとしてオイルの塗布や拭き上げを行う、という職人の姿勢が現れるポイントです。
ギターに限らず、あらゆる製品、プロダクトは掛けたコストがそのまま価格に反映されます。手間をかけるほど、いい素材を使うほど製品価格が高くなってしまうことは避けられません。しかし、その中でいかに良いものをお求めやすい価格で提供できるか、という命題に各メーカーが取り組むことで、従来より「さらに良いギター」が生まれます。
HEADWAY JTシリーズ各製品は、ヘッドウェイの育んだクラフトマンシップを根幹に、日本の職人がミドルクラスの新たな地平を切り開くアコースティックギターの全く新しい製品群です。
全てのJTシリーズ製品は上記の「チューンナップ」を施して完成しています。その品質をお確かめください。
Headway Guitars Japan Tune-up seriesサイト
http://www.deviser.co.jp/headway/jt