ARS(アドバンスドリアシフト)ブレイシングについて

2016年から取り組みを開始し、2017年には飛鳥チームビルドシリーズのHD-115 ATB ARSとして製品化された「ARS(アドバンスドリアシフト)」についてご紹介いたします。

この記事を通じて、ヘッドウェイのブレイシングに対する考え方と、ARSについての理解を深めて頂けると幸いです。

 

ブレイシング = 板の補強


ブレイシング(力木)とはアコースティックギターの裏側に接着してある補強の木を指します。4枚の板で形作られるボディ部の強度を補完するだけでなく、ギターの音質にも影響する重要な箇所です。

ブレイシングの位置・加工で音質は変わる

交差位置の調整


Xブレイシングの交差位置はサウンドホールから遠い方がブリッジ部分が固くなり音も硬質になる傾向に、サウンドホールに近い方がブリッジ周りに余裕ができ、鳴り方も柔らかく、倍音が出るようになります。

ヘッドウェイのブレイシングの変遷


少しマニアックな話になりますが、ヘッドウェイのブレイシングの移り変わりについてご紹介します。昭和期から2000年代にかけてはいわゆる伝統的なXブレイシングの位置(仮にノーマルXと呼びます)、硬質で力強いサウンドと弾き心地は「ヘッドウェイらしさ」としてファンの方に覚えてもらう特徴になりました。
00年代後半にかけて、フィンガー・ピッキングスタイルの台頭にともない、サウンドホールに近いフォワードシフトXブレイシングを頻繁に取り入れることになります。
フィンガーピッキングスタイルはピック弾きに比べて、繊細なアタックに機敏に反応するギターが求められます。フォワードシフトはそのニーズに合致する構造と言えます。

リアシフトモデルの試作

リアシフトXブレイシングを採用したギターは、まず百瀬により制作されました。先述の通り、(これまで作ったことはない状態でしたが、)音質面でネガティブな印象があったリアシフトブレイシング。
数本のリアシフトモデルの制作を通して感じたことは、百瀬としては半分予想通り、半分予想外だったと振り返ります。

百瀬

昭和の頃からずっと(サウンドホールから)38mmの位置でXブレイシングを交差していた中で、07年頃にフォワードシフトをやってみるってときは、びっくりしました。大きな音は出るし、38mmでは出ないような低音も出るしで、『これはすごい』と。そんな経過もあったので、今回46mmの位置(リアシフト)なんて聞いたときは、こんなもん鳴るわけ無いでしょ、と思ったんだけど(笑)。とは言え、まずは作ってからだな、と。

組立ての時に安井くんとギターを試していて、『どう思う?』『やっぱり鳴らないです』とか言ってたんだけど、完成した日から連日弾くのを聞いていたら、日を追うごとに『あれ?意外と音出るじゃん』と。低音もはっきりしているし、それに今までヘッドウェイが苦手としていた1,2弦の音がしっかりと鳴ってきて、全体のバランスが良く聞こえてくるようになったんだよね。

それから2,3本リアシフトのギターを作る中で、完成直後からスムーズに鳴るようになってきた。
恐らく表板とウラ板のバランスが悪くて、鳴るのに時間が掛かったんだと思う。

今までやってきて38mm(ノーマルX)の時は低音が弱かったんだけど、スキャロップを入れたリアシフトは高音から低音までのバランスが良くて、38mmのノンスキャロップに比べて低音も出るし、高音も出るようになって、かなり理想の音に近づいたんじゃないかな。

ARS(アドバンスドリアシフト)

ヘッドウェイは百瀬のリアシフトXブレイシング仕様のギター制作を通じて、リアシフトのメリットを最大限に引き出すには、その他のブレイシングを含めた全体的な調整、セッティングが必要な事を学びました。
Xブレイシングの交差位置に合せて、その他のブレイシングを含めた形状、削り具合、それぞれの位置関係も考慮する必要があります。一連の検証を踏まえた、このブレイシングパターンを「進化したリアシフトXブレイシング」という意味で「ARS(アドバンスドリアシフト)」と名付けました。

飛鳥チームビルド製品、スタンダードシリーズ製品を通じて、製品型式に「ARS」の記載があるものは全てこのブレイシングパターンを採用しています。

ぜひお近くの店頭でお試しください。

HD-115 ATB ARS

希望小売価格・・・¥250,000(税抜)

ヘッドウェイ伝統のHD-115モデルのARS仕様。製品ページ

【新製品】HD-555 ARS

希望小売価格・・・¥380,000(税抜)

アディロンダックスプルーストップ、マダガスカル・ローズウッドサイドバックという希少な木材をふんだんに使用したフラッグシップモデル。ARS仕様でよりバランスに優れたモデルに仕上がりました。製品ページ

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