カスタムショップの仕様を落とし込んだ安井雅人の意欲作
2018年に製作された安井雅人のカスタムモデルからこだわりのエッセンスを受け継いだ「HC-Y's Concept/ATB」。本機はその第二弾となり、安井が進化させたHeadwayの技術を盛り込み、より洗練させたモデルとなります。
カスタムショップでしか使用してこなかった仕様、10本のみの限定少量生産だからこそ可能となったこだわりの仕様が本機最大の魅力です。
安井雅人こだわりのスペックを詳しく解説
■セレクトした木材・こだわりの3ピースバック
トップ材には目が詰まり見た目にも美しい、ホワイトスプルースを採用しております。
飛鳥工場ではセレクトした材料のみを仕入れておりますが、そこから更に安井がセレクトした良質な材料を使用しております。
ホワイトスプルースは硬質でパリッとしたサウンドが持ち味で、安井が狙うサウンドの基礎となります。サイド・バック材にはこちらもセレクトしたインドローズを使用しながら、バックのセンターに最高級キルトマホガニーを挟み込む3ピースバック構造になっております。
ローズウッドのアタック感とブライトなサウンドに加え、キルトマホガニーの中低音・柔らかさをエッセンスとして組み込んでおります。
バックのキルトマホガニー部分には木材が本来持つ色味を活かしながらよりその魅力を引き立てるようにブラウンのグラデーションを施しております。通常のアコースティックギターの塗装と比較すると手間が掛かりますが、限定生産だからこそ出来た仕様となります。
また、ボディはHeadwayのカッタウェイボディ「HC」ボディですが、ボディの厚みを通常のモデルより3㎜薄く仕上げております。
これは抱えやすさを重視しながらも、Headwayのこだわりである生音もしっかり鳴るギリギリのボディ厚に仕上げております。
ボディ厚が薄くなったことにより、レスポンスの良さと煌びやかな高音域もこのギターは手に入れています。
■Headway最新の34ブレーシング
ブレーシングパターンにはHeadwayマスタービルダー百瀬恭夫が開発した最新のセミフォワードタイプ「34ブレーシング」を採用しております。
豊かな中低音域が特徴のブレイシングパターンで前回制作したHC-Y's Concept/ATBがARS(アドバンスドリアシフト)ブレーシングでブライトなサウンド方向だったのに対して、今回のモデルは全域でバランスよく鳴る方向性を目指し「34ブレーシング」を採用しております。
また、34ブレーシングはマホガニーともサウンドの相性が良く、そのことを考慮し安井はボディバックにキルトマホガニーを挟み込む3Pバックにしています。
■ESUネック・ポジションマーク
ギターの弾きやすさにおいて重要な役割を担う、ネックグリップにはHeadway最新の「Extra Slim U Shape(エクストラスリムUシェイプ)」を採用しております。
エレキギターに近い感覚で弾くことも可能なエクストラスリムネックと薄いボディ厚が合わさることで抱えやすく弾きやすいを体現したモデルとなっております。
また、エクストラスリムネックはトラスロッドに加えカーボンサポートを施した、ハイストレングスネック仕様となっております。
これにより薄いネックながら安定した強度とネックが強度を持つことにより、音の立ち上がりが早くなりサスティーンも長くなります。
さらに安井が開発を行い、Headwayで今年から一部モデルのみに採用しているアジャスト部に特殊なベアリングを使う「ノンツイストアジャスト」も採用しております。
ベアリングによりトラスロッドを締め込んだ際にネックに生じる捻じれを軽減することができ長く使う中でネックの安定性をより高めています。
ポジションマークには指板上・サイド共にルミンレイを採用しております。
ルミンレイは蓄光素材の為、薄暗いステージなどでも視認性が良く実用性を高めております。
指板上のポジションマークはΦ3のアルミリングの中にルミンレイを仕込んでおり、高級感を持たせた仕上がりになっております。
また、ポジションマークの配置にも安井のこだわりがあり、Φ3の小さめなポジションマークを6弦側に寄せて配置することで、カスタムモデルのような雰囲気を持たせております。
■ATB初採用Y500ヘッド・ペグ
ヘッド形状には安井がカスタムショップでのみ使用していた「Y500」ヘッドをATBシリーズで初採用しております。
通常の500番ヘッドと比べ、ヘッドサイドに緩やかなカーブを持たせ、先端部分を凹ませたデザインが特徴的です。
また、ヘッド外周部分の面取りを大きく行うことで、よりモダンな印象を与えています。
ペグにはGOTOH製のSGV510Z ZL5 XG を採用しており、安井も信頼を置く安定したチューニング精度が魅力のペグです。
その中から新しく登場した「ジリコテ材」を使用した木製のペグボタンの物をセレクトしており、Y500ヘッドともルックス面での相性も良く完成度の高いヘッド周りとなっております。
■ピンレスブリッジ・MiSiピックアップ
ブリッジにはピンレスブリッジを採用しております。
ピンレスブリッジはサドル上での弦の角度が浅くなることでテンション感が柔らかくなるメリットがあります。
低めの弦高に加え、ピンレスブリッジによる柔らかいテンションにより弾きやすく軽いタッチやニュアンスを細かく表現することができます。
ピックアップにはMiSiの「Acoustic Trio Air」を搭載しております。
このピックアップをアンダーサドルのピエゾピックアップで拾ったサウンドと別系統のMEMSマイクからもサウンドを拾い、2系統をミックスすることでナチュラルなアコースティックサウンドを出力することが出来るハイエンドユニットです。
■アバロンロゼッタ・ノンピックガード仕様
ボディの装飾である、サウンドホール周りのロゼッタにはアバロンを施しております。
ボディの鳴りを最大限生かす為、ノンピックガード仕様となっているため、ホワイトスプルースの白い木地の色味にアバロンのロゼッタがシンプルながら高級感を出す安井らしさを感じられる装飾に仕上げております。
HC-Y's ConceptⅡ SF,S/ATBの制作模様を解説した連載ブログ記事
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